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わが

リスナー人生

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2.衝撃の1曲

キング・クリムゾン/クリムゾン・キングの宮殿

vol.9 H13年10月号掲載



ワーナーブラザーズ・パイオニア
P-8080A

 
 そう、あれは高校2年の頃だった
だろうか、ラジオのFMから流れて
きた音楽に衝撃を受けた。

 遠くから汽笛?が聞えてきたと思
うと、耳を劈くような攻撃的な音と、
暴力的で歪んだヴォーカル。

目まぐるしく展開するブラスとドラムのバトルに
ギターとメロトロンが絡み、
そして美しい、
狂おしいほどに美しい「エピタフ(墓碑銘)」が・・・
破壊との対比により、その美しさを際立たせ、
静寂な風の香りに包まれ流れて来る。

インプロゼーションの後
「深紅の王の宮殿」によって再びピークを迎える。
「クリムゾン・キングの宮殿」である。


後の世代にはビートルズの「アビー・ロード」を追い落として
全英チャートの1位になったと伝えられることが多いが、
私にとってはそんなことはどうでも良いことだ。

部屋を締め切り、一人静かに大音量で聴いていると、
体中の血液が沸騰しながらも寒気を感じ、戦慄さえ覚える。

聴き終えた後の脱力感と何とも言えぬ不思議な快感・・・
当時プログレと言えば
神秘的、叙情的、前衛的、という評価と共に、
暗い、陰湿な、訳のわからない音楽
といった受け止め方もされていたのも肯けるし、
聴いているのは変人だ!
なんて言われる事もあったのは仕方ないかもしれない。

でもそれは偏見で、
私にとってのプログレとは、単なる音楽の形式ではなく、
当時の若いミュージシャン達が、既成の音楽に飽き足らず、
自分の感性やメッセージの表現法をより広く求め、
探し、模索し、前進して行った。

その方向性として、ジャズ寄りがあり、クラシック寄りがあり、
後のテクノとなる無機質系(私は馴染めなかった)があり、
という風に受け止めています。

プログレが発生し、本場でもあるヨーロッパでは、
子供の頃からクラシックを勉強していた人達が多いせいか
曲の構成から、楽器での情景描写、感情表現等、クラシックに
通じる部分もあり、かなり高度な楽曲も多くあります。


まあ、解説めいたことはともかくとして、
クリムゾンをきっかけに入ったこの世界ですが、
彼らと共にプログレの双璧とも言われることもある
ピンク・フロイドの世界に触れ、
更に深みに嵌ることになる。

理論と驚異的なテクニックに裏打ちされたクリムゾンに対し、
生の楽器から電子楽器も、人間も、
はたまた犬や生活の中での機械さえも対等の表現道具にすぎず、
それらから発する音や声といった素材を組み合わせて独自の
世界を創造し、幽玄の世界へと誘ってくれる。

19歳の時には、一人で出掛けた四国、九州の自転車旅行で、
NHKの「ヤング・ミュージック・ショー」での
ピンク・フロイドを観たいが為に
佐賀のユースホステルの規定を破り、
体調不良を理由に宿泊を一日延長した程です。


その後、イエス、ELPから、フォルムラ・トレ、
ルネッサンス、アモンデュールUと聴きあさったが、
幸い危ない人間にはならずに、
田舎から静岡の街に出て来てからは、
聴く音楽のジャンルが飛躍的に広がることになります。

                次号へ続く
 

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