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7.音楽とドラッグ
アート・ペッパー
/ ライヴ・アット・ヴィレッジ・ヴァンガード
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vol.14 H14年3月号掲載
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ART PEPPER / LIVE AT THE
VILLAGE VANGUARD
GXH 3009-11 / KING RECORD
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ロックを語る上で欠かせないもの
の一つに、時代背景と共にドラッグ
を挙げても良いだろう。
そのドラッグにより、亡くなった
ミュージシャンはいったい何人いる
ことだろう。
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私がロックを盛んに聴いていた60年代終わりから
70年代にかけても、先月号で取り上げた
ジャニス・ジョプリンやジミ・ヘンドリックス
を初めとして何人も亡くなっているようだ。
60年代半ばにサンフランシスコ辺りでヒッピーが登場し、
それと共にロックとドラッグの関わりが強くなってきたよう
だが、私はその代表格であるジェファーソン・エアプレイン
やグレイトフル・デッドは、70年代に入ってから少し聴く機
会があったが、今一つ馴染めなかった。
それは私がドラッグをやっていなかったからというよりも、
単に音楽的な波長が合わなかっただけだと受け止めている。
なぜなら、やはりドラッグとの関わりが取りざたされる
プログレには波長が合い、
音楽そのものに麻薬効果を感じ嵌まっていった。
実際に誰がドラッグを使用しながら曲を作ったか知らないが、
クラシックのように音での情景描写や、
感情表現が巧くなされていたからだろうか。
それは理論に裏打ちされていたからかもしれない。
私の場合、ドラッグに頼る代わりに、
昼間からカーテンを閉めきり、
お香でも焚きながら一人静かにオーディオ装置に向かい、
真空管の灯がぽぅっと灯るのを見つめながら
大音量で聴いていると、体の細胞が直接振動し、
熱くなると同時に、脳にもフィードバックされたようだ。
更には、
そういった演出をすること自体に自分自身で酔いしれ、
その麻薬効果を増幅させていた気もする。
しかし、理屈抜きで感じさせてくれるミュージシャンもいた。
前述のジミ・ヘンやジャニスもそうだ。
そしてジャズの世界にも。
アート・ペッパー・・・
才能が有り、若くして名声を得てドラッグに溺れ、
長い投獄生活を繰り返した典型的な破滅型サックス奏者。
奇跡的なカムバックを果たした後の77年、
ニューヨークのヴィレッジ・ヴァンガードでのライヴを聴き、
彼の背負った重い人生を感じる程の年齢ではなかったが、
やはり理屈抜きで繊細な表情の中に秘めた激情を感じた。
まるで綱渡りをするかのごとく弱々しく、
ある時は力強く、
人生を物語るかのように泣き叫ぶサックス。
イージーリスニングともなり得るほどの
メロディーでありながら、その奥底に
甘美な陰影感の漂う世界に引きずり困れてしまうと、
もはやイージーな感覚では聴いていられない。
楽器をやらない、更にはジャズに詳しくない私にも
テクニックがありながら、そういったものを
超越した世界を見せてくれる。
ミュージシャンが何故ドラッグに手を出すのか・・・
興味本位、
期待感から来るプレッシャー。
才能がありながら自分を超えられない焦りと苛立ち。
しかしそれは他の世界でもあることだ。
甘えもあるのか・・・、
だがドラッグを使うことを肯定するわけではないが、
それによってすばらしい音楽が出来上がったことも事実で、
結果としてその恩恵を受けているのを考えると複雑な心境だ。
次号へ続く
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