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リスナー人生

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5.原点を顧みる

高橋竹山 / 津軽三味線

vol.12 H14年1月号掲載



津軽三味線 / 高橋竹山
  CBS/SONY 25AG347

  デジタル全盛の時代になり、だからこそ
アナログの良さも見直され、懐かしむ人達と、
新鮮に受け止めカッコイイとする若い人達が
いる。
アナログレコードも一部のショップや一部の
ミュージシャンによって復活しているが、昔
を懐かしみ、レコードが無くなった!と探さ
ないで嘆く人達でなく、若い購買層によって
支えられているというのも面白い。 


若い人達にとって、CDが当たり前の時代に、あえてアナログ
レコードを聴く事や、リリースする事は皆とは違い、
オシャレ、カッコイイ・・・と受け止められるのだろう。

そういえば私も若い頃には人と同じ事を、
同じ格好をするのがいやで、競うように髪の毛を伸ばし、
レコード屋のエサ箱を漁り、マイナーだけどカッコイイ、
面白いものを見つけては、さも自分が見出した
ミュージシャンかのように友達に自慢し、
ロンドンブーツで闊歩し、コンサート会場周辺でたむろする。

・・・なんか、結局は周りと同じだったりして・・・。
その頃の写真・・・とても見せられないですね。

二十数年経った今となっては、
自分で見るのも恥ずかしいですよ。


音楽の原点に還る!
・・・という大げさなタイトルで書き始めた今月号だが、
当時の事を思い起こしてみると、
ただ自分にとって新しいものを、周りの人達が
聴いていないものを求めていただけの気もする。

フォーク、ロック、ジャズ、ブルース、クラシック等、
主だった音楽ジャンルを一通り聴いてしまうと、
(と言ってもほんの上っ面だけだが・・・)
次は必然的に民族音楽に行くしかなかったが、
それを音楽の原点として捉えていた訳ではなかった。

元々歴史や地理に興味の無かった私が、
世界の民族を研究しようなんて気はさらさら無く、
レコード屋で見つけた面白そうなレコードをかけ、
解説など読まずにそこから出てくる楽器の新鮮な音を、
聴き慣れない・・・しかし体に、
心に響くリズムやメロディーを楽しむだけだった。

アンデスの素朴な音色や、
バリ島の心躍るガムラン音楽に惹かれたりもしたが、
ある時、渋谷の「ジァンジァン」という地下劇場で、
津軽三味線が受けていると聞く。

なんだ、民謡か・・・と思いつつ、
その「ジァンジァン」で録音した「高橋竹山」
のレコードを買って聴いてみると、
それはもう私にとって民謡でも伝統音楽でもなかった!
鳥肌が立つような力強い撥さばきで聴く者を圧倒し、
体に、心に直接響き、ぐいぐいと引き寄せる。

ロックやブルースを聴く時の感覚と何ら変わらなかった。

元々譜面も読めず、その時の自分の波長に合えば良い、
と言う聴き方だったので、
同じように抵抗無く、カッコイイものとして聴いていた。


何年か経って津軽三味線の歴史的背景や、
竹山の苦難を乗り越えての生い立ちに触れ、改めて聴くと、
心を揺さぶり、自然と涙を誘い・・・
それはもう・・・。


ジャズ・サックス奏者の「ナベサダ」が、竹山との共演話を
「とても私が入り込む余地は無い」と断ったという
エピソードも頷けるし、
日本人だからとかいう言葉では片付けられない世界だった。

そしてアメリカにも同じように虐げられてきた人達の
心の底からの叫びがあり、
英語が判らないまま、訳詩も読まない私は惹かれていった。

                  次号へ続く
 

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