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わが

リスナー人生

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4.音楽の融合

マハヴィシュヌ・オーケストラ / 火の鳥

vol.11 H13年12月号掲載



MAHAVISHNU ORCHESTRA
Birds of Fire
CBS・ソニー SOPL-175

 
 いつの時代でも新しいものが生まれる時
には賛否両論ある。
 歴史を尊び、伝統を重んじて継承する人
達と新しいものを模索し、改革、創造する
人達がいる。

 音楽の世界でも同じだ。
しかし、科学の進歩と違い、全く新しいも
                      のは生まれにくいだろう。  


人間にとって心地良い和音や、哀愁を感じるメロディー、
乗れるリズムなど、生理的に受け入れる音というのは、
時代によって、そう変わるものでもないだろうから。

ましてや、ミュージシャンは進歩のつもりで
新しいものを取り入れたり方向性を変えても、
ファンは必ずしも変化を求めているとは限らない。

方向性を変えても、ファンは必ずしも
それを受け入れるとは限らない。
相も変わらず同じパターンを、
過去のヒット曲を求めてくることもある。

ミュージシャンも仕方なく・・・?
 それを演奏する・・・事もあるだろう。


私自身も、入れ込んでいたミュージシャンに対してでも、
メンバーが替わったり、音楽性が変わって
聴かなくなったことは多い。

若い頃に変革を起こし、新たな世界を築きながら、
それに満足し、安住の地として人もいるが、
常に変革を目指している人もいた。

そんな一人がジョン・マクラフリンだ。
(マクラグリンと記されることもある)

今思えば私にとってのフュージョンへの
入り口となった人であろうか。
といっても、当時はまだフュージョンというジャンルはなく、
彼の音楽はジャズ・ロックとも言われ、
レコード屋でもロックのコーナーにあったが、
現在、近くのCDショップではジャズ・コーナーにある。

まあ、それは兎も角として、フュージョンの起源としては、
60年代後半のマイルス・デイヴィスとされることが多いだろうが、
彼と係わり合いがあり、フュージョンを
音楽の一ジャンルとして確立していく代表的な
ミュージシャンの中に、チック・コリアやジョー・ザビヌル、
ハービー・ハンコック、ウェイン・ショーター達と共に
ジョン・マクラフリンがいる。


ある時、音楽雑誌の広告だったか、レコード屋の店頭だったか、
「マハヴィシュヌ・オーケストラ/火の鳥」
という文字に惹かれた。

EL&Pがやっている、ムソルグスキーの「展覧会の絵」
のロック版みたいなものだと思い、早速買って聴いてみると、
ストラヴィンスキーの「火の鳥」とは全く別の曲だった。

ドラの音から始まり、目くるめく押し寄せるサウンドの洪水、
スネアの転がるようなリズムに変拍子・・・、
卓越したギターとエレキ・ヴァイオリンが縦横無尽に
駆け巡り・・・、時にスリリングに、
時に哀愁を誘いドラマチックに展開していく。

それはジャズやロックを始め、クラシック、ブルース、
フラメンコなどの音楽を消化し融合させた、
まさにオーケストラと呼ぶにふさわしいものだった。

ミュージシャンを目指していた友人に聴かせると、
楽器のコード進行や奏法、何拍子かが気になっていたようだ。
7拍子や、9拍子を多用しているらしいが、
今聴いても判らないし、リスナーに徹していた私は、
全く気にならずその世界に入り込めた。

フュージョンが一音楽ジャンルとして確立された今、
彼がその代表的ミュージシャンとして挙がりにくいのは、
その枠に収まり切れずに、常に進化を続けているからだろう。

そして若かった私は、周りの人達と競うように
新しいものを探求すると同時に、
原点を顧みることも忘れなかった。

                次号へ続く
 

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