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わが

リスナー人生

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3.オーディオと音楽

サンタナ / キャラヴァン・サライ

vol.10 H13年11月号掲載



SANTANA / CARAVANSERAI  
CBS・ソニー  SOPN-38

 
 高校生が喫茶店に入ったり、エレキ・
ギターを持っているだけで、下手をする
と不良扱いされてしまうような時代に、
プログレを聴いているなんて異端扱いさ
れてしまうのではと感じたのも所詮は田
舎にいたからだった。 

当時の私にとっては都会といえる静岡に出て来て、
そう思い知れされることになる。

好奇心旺盛で、感受性の強い年頃に入った職場の環境により、
聴く音楽のジャンルも一気に拡がった。

かねてより興味があり、趣味ともしていた
オーディオの仕事に就いたのだが、
ここの上司と先輩が、また個性の強い人間で、
本物を見極める…
いや、聴き分ける耳と感性を持った人だった。

その為、へたなオーディオ専門店以上にマニアックな店となり、
そこに集まってくる常連さん達も、
それなりの兵揃いで、聴く音楽も多彩だ。

そんな人たちに囲まれ、影響を受けながら、
ロック、フォーク、ブルース、ラテン、ジャズ、
クラシック、民族音楽…と聴きあさった。


ところで、その音楽と密接な関係にあるオーディオ
という趣味にはいろいろな楽しみ方があって、
アンプやスピーカーを自作する機械いじりの楽しみや、
各機器を接続コードにまでこだわり、
自分なりに組み合わせ、
その性能をより引き出そうとする使いこなしの楽しみから、
更には取得(購入)する楽しみや、
眺める楽しみまでもあるのでは。

車やカメラ、パソコンといった男性が嵌りやすい他の趣味
にも同様なことがいえるだろうが、それは兎も角として、
最終的には音楽を楽しまなければ意味がないでしょう。
その音楽の楽しみ方も人それぞれで、
感性で受け止め、感動したり、同情したり、
或いは癒されたりといった、受け身的な聴き方をする場合と、
そこから積極的に、
自分も歌ってみたい、
演奏してみたい、
キャーキャー言われたい、
お金を稼ぎたい、
といった願望や野望に発展することもあるでしょう。

私の場合は、感性で受け止め、
そこからもっと感動できる曲はないか、
もっと面白い曲はないか、
もっとこの楽器の音をきれいに再生できないか、
もっとこの艶っぽい声を生々しく再生できないか。
そんな方向に発展してしまったから、
これはもうプレイヤーを目指さず、
「わがリスナー人生」を歩むしかなかった。
それともプレイヤーとしての才能がないのを、
本能的に感じ取っていたのだろうか。


まあ、いずれにしても、
そんな、オーディオマニア的に音を楽しみつつ、
音楽としても感動した作品の一つに、
サンタナの「キャラバンサライ」がある。

サンタナといえば、昨年のグラミー賞での記録的な活躍には、
驚きと共に、戸惑いすら覚えたのは私だけではないでしょう。

私が聴いていた頃は、軽快なラテン・パーカッションに、
哀愁を帯びたギターが絡みつき、躍動的且つ官能的な世界で、
トリップさせるが如く感性を刺激してくれた。

そこから更にジャズの要素も取り入れ、
宗教の影響もあって精神世界へと傾倒し、
楽器により感情表現、情景描写するインストルメンタル中心の
トータルアルバムとしたのが「キャラバンサライ」で、
前号で少し触れたピンク・フロイドの「狂気」と共に、
高音質で聴くことで、よりそれらが伝わる、
音楽とオーディオを融合させてくれた曲だった。

そして音楽シーンでも、融合が盛んになってきた時代であった。

                次号へ続く
 

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