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わが

リスナー人生

広告や情報の羅列ではなく、大人が読むに耐えうるタウン誌を目指している
「しずおか街角物語」の依頼により私が書き下ろし、掲載されている連載コラムを
編集部のご好意により当サイトに、掲載させて頂くことになりました。
Web上では3ヶ月遅れで掲載します。

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8.そして、また音楽へ・・・

vol.14 H14年4月号掲載

LED-ZEPPELIN /
The Songs Remains The Same
NJL-11389 /
ワーナー・ブラザース映画会社

 
音楽を演奏する側でなく、専ら聴く側の
立場でのコラムを書いてきたが、実はひ
たすら聴き続けてきた訳ではなく、音楽
の世界から遠ざかっていた時期もありま
す。20年程前、仕事で充実感を得られず、
山岳会に入って四季を問わず山に登って
いました。危険を伴う世界ですが、今で
言うヒーリング・サウンドが、生で聞ける
  世界でもあります。しかし下界に戻ればまた仕事、プライベート
  だけでなく仕事でも充実感を味わいたい・・・。

そんな時ひょんなきっかけで、音楽関係の仕事に就くことになりました。
といっても、カラオケで若い人達が盛り上がる飲み屋です。
好景気時代だったとは言え、一時は18軒のグループにまでなった
程の店ですから、仕事は充実を通り越している位でした。
歌うのが嫌いな私も、
リスナー人生に反して歌わざるを得ないこともあり、
飲んで帰る事も多く、家でレコードを聴く余裕もありませんでした。

そんな時現れたのがLD(レーザー・ディスク)です。
ビデオよりも画質が良く、半永久的に劣化しないという触れ込みで、
「絵の出るレコード!」なんていうキャッチ・コピーだったと思います。
オーディオの趣味仲間から、
音楽を映像を見ながら聴くなんて邪道だ!
と言われつつも買ってしまいました。
LDを再生するからにはと、テレビも10年以上使っていた
色の付かなくなってしまった14型から、
一気に27型のモニタータイプに変えました。
ついでにビデオも・・・
なんと、それまでビデオは持っていなかったのです。
テレビ観るよりも、レコードを聴いている方でしたから・・・。

いきなりハイクォリティーのAV機器が揃い、
後はソフトを揃えるだけで、初めて買ったLDが
レッド・ツェッペリンの「永遠の詩」でした。
ツェッペリンといえば、
私の世代では、ディープ・パープルと共に
ハードロックの双璧を成すグループですが、
これは、メンバーが私生活シーンの中でツアーの連絡を受け、
アメリカでの公演を終えるまでの、ライブ映像中心のドキュメン
タリー映画で、私自身、20数年前に劇場で観た事がありましたが、
改めてLDで観ると、当時の事が色々と想い出されます。

デパートのBGMで、「天国への階段」がかかり、
冗談じゃない!
こんな所でかけるような曲じゃあないんだよ・・・
と言ってしまった事。
ジミー・ペイジ目指し?、東京へ行ってしまった友人の事・・・。

その後、私は独立してショットバーを出すことになりました。
カラオケもなく、それまでとは全く違う雰囲気の店で、
LDも次第に増えてきたところなので、
営業の補助に店のモニターに流すことにしました。
当初はBGMになりやすい曲を主体にかけていたのですが、
自分の趣味的感覚を含めて仕入れたLDをかけるうちに、
音楽の話を肴に飲むお客さんも増え、評判を聞きつけ、
プロのミュージシャンもコンサート上がりに
寄ってくれるようになりました。

次第にマニアックなリクエストも多くなり、
それに応えるべく海賊版のビデオを含め、探し出し、
かけるという繰り返しでライブラリーが出来上がってきました。
結局仕事により“リスナー人生復活”という訳です。
14年間、お酒と共に音楽を売り物に営業し、
多くのお客様と接してきました。

一見ロックとは無縁のようなビジネスマンが、
昔のハードロックの映像を見て、
「私もこんな格好してバンドやってたんですよ」とか、
音楽談議に花を咲かせる人達や、
彼氏との想い出の曲が偶然かかり、目を潤ませていた女性も・・・。

音楽は直接人間の感性に訴えかけると同時に、
それを受けた時の状況を想い出させてくれます。
その時の心境の代弁者であったり、癒しであったり、
メッセージであったり、またビジネスとしても・・・。

今、そんな音楽に囲まれ仕事が出来るのが、
また、音楽のある場所を提供できることが幸せです。

今日もまた店でLDをかけ、
小さなドラマを見ることが出来るかもしれません。

そして明日も・・・。

                   完
 

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